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大学院 総合文化研究科 生命環境科学系 身体運動科学
教養学部(3・4年) 統合自然科学科 スポーツ科学
教養学部(1・2年) スポーツ・身体運動

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研究

第30回身体運動科学シンポジウム 報告記

2022年11月23日(水・祝)、第30回身体運動科学シンポジウム「骨格筋・代謝からみる身体運動科学」がスポーツ先端科学連携研究機構(UTSSI)と共催で開催された。昨年度に引き続き、オンラインでの開催となったが、100名近くの方に参加していただいた。
シンポジウムは、UTSSIの機構長である中澤公孝教授の司会進行によって進められた。開会の挨拶では、身体運動科学研究室の主任である八田秀雄教授より身体運動科学シンポジウムの開催経緯が説明された。本シンポジウムは、身体運動科学研究室が大学院総合文化研究科に所属することが決定した1993年に、学内外に向けた研究室の活動紹介や大学院志望者の勧誘を目的として開始された。毎年バイオメカニクス、トレーニング科学、ニューロサイエンスなど多岐に渡り、身体運動科学に関するテーマを取り上げてきた。今回のシンポジウムは「骨格筋・代謝からみる身体運動科学」をテーマとし、若手研究者の発表をきっかけに、現在そして未来の健康について考えることを趣旨として開催された。
身体運動科学研究室の若手研究者である高橋謙也氏、高橋謙也氏、松永裕氏(いずれも総合文化研究科・助教)、高橋祐美子氏(総合文化研究科・准教授)によって、これまで取り組んできた骨格筋・代謝に関する研究が紹介された。
高橋謙也氏は「性腺機能低下症モデルから考えるエネルギー代謝の性差」という題で、オスとメスの運動時における糖と脂肪の利用の相違や性差とホルモンの関係性について紹介された。
門口智泰氏 は「活性酸素種や脂肪酸代謝産物はサルコペニアに関連するか?」という題で、心血管疾患や加齢に伴うサルコペニアにおいて酸化ストレスとミトコンドリアが持つ役割について紹介した。
松永裕氏は「トレーニング休止に伴う骨格筋ミトコンドリアの変化と分岐鎖アミノ酸摂取の影響」という題で、休止中の分岐鎖アミノ酸摂取に伴うミトコンドリアの変化や、その変化が運動再開時の骨格筋グリコーゲンの利用に及ぼす影響について紹介した。
高橋祐美子氏は「糖質の摂取習慣が骨格筋を中心としたエネルギー代謝に与える影響」という題で、高糖質(低脂肪)食摂取が運動中の糖質のエネルギー利用やパフォーマンス、運動後におけるグルコース吸収やグリコーゲン回復に及ぼす影響について紹介した。
若手研究者たちの発表後、八田秀雄教授の進行により総合議論が行われた。各々の発表におけるキーワード(性差、ミトコンドリア、トレーニング、栄養)を元に、ヒトの寿命や健康について、様々な視点から議論された。年々進歩する科学技術により、骨格筋・代謝に関する知見が常にアップデートされていることが分かった。また、本シンポジウムを通じて、感染症の拡大に伴い変化した食生活や身体活動量・運動習慣について見直すきっかけになったと考えられる。
身体運動科学研究室における大学院制度の設立とともに開始された本シンポジウムは、今年で30年という節目を迎えた。来年度より統合自然科学科スポーツ科学コースが開設され、身体運動科学研究室は前期課程、後期課程、大学院の三層体制がようやく確立される。本研究室のメンバーとして、さらなる高度な研究と教育、そして身体運動科学の発展に向けて尽力していきたい。
最後に、本シンポジウムに参加された皆様、そしてシンポジウムの運営にご尽力された関係者の皆様に深く御礼を申し上げたい。
(執筆:身体運動科学研究室 助教 金子直嗣)

シンポジウムの一コマと登壇者

主任の八田秀雄教授(写真一番上)と本シンポジウムで演者を務めた若手研究者(上から高橋謙也氏、門口智泰氏、松永裕氏、高橋祐美子氏)